「慢性前立腺炎」という病気をご存知でしょうか?
前立腺とは男性のみにある生殖器で、膀胱の真下に位置しているクルミくらいの大きさのものです。この前立腺になんらかの負荷が加わって炎症を起こしてしまうのが、前立腺炎です。
その中でも「細菌性」のものを「急性前立腺炎」と呼び、「非細菌性」と呼ばれて原因の特定が難しいものを「慢性前立腺炎」と呼んでいます。主に中高年に多い病気なのですが、私は30代前半にこの「慢性前立腺炎」が発症しました。
慢性前立腺炎の辛いところは、原因がはっきり分からないことと、治るのに時間がかかることです。私は2017年の1月頃に発症し、2年近く経ちますが未だに完治していません。
ですが、症状としては普通に生活出来るレベルまで改善されましたので、私が実施した治療方法についてご紹介していければとおもいます。
目次
前立腺炎とは
前立腺炎になると、下半身に症状が出てきます。下腹部や股関節、肛門周りや太ももなど、一見前立腺とは関係ないように思われる部位にも症状が現れます。
腹部の症状 :下腹部、足の付け根、会陰部(肛門の前)の鈍痛、疼痛など。
その他の症状:睾丸の痛みや不快感、射精後の痛み、陰のうの痒み、太ももの不快感など。
急性前立腺炎
原因
多くは尿道から細菌が侵入して炎症を起こすものです。原因となる細菌は大腸菌などの腸内細菌や、性感染症で問題となるクラミジアなどの細菌が挙げられます。
性行為からの感染も多いそうで、わたくしも初めて泌尿器科で診断を受けた際に、「最近、女遊びしましたか?」と聞かれました。最初は失礼な先生だと思いましたが、後々確認が必要なんだと分かりました。
検査方法
急性前立腺炎の検査方法としては、尿検査や血液検査があり、細菌性であればここでなんらかの数値異常が出てきます。
症状
急性前立腺炎の症状としては、炎症によって前立腺が腫れることにより、尿道が圧迫されて尿が出にくくなったり痛みが出たり、頻尿になったりと前立腺肥大症に似たような症状が出ます。また38度を超える発熱があるのが特徴です。
治療方法
急性前立腺炎は細菌によるもののため、多くの場合は抗菌薬の服薬のみで治療可能です。しかしいくら抗菌薬を飲んでも症状が改善されない場合は、細菌性ではなく慢性前立腺炎の可能性があります。
慢性前立腺炎
上記の尿検査や血液検査でも何の問題もなく、また抗菌薬をいくら飲んでも症状が改善されない場合、慢性前立腺炎である可能性が高いです。
症状
細菌性の急性前立腺炎と同様に、炎症によって前立腺が腫れ、排尿痛や排尿障害が起きることがあります。
わたくしの場合は最初は睾丸の付け根から痛みが始まり、その後鼠径部、右の下腹部、左の下腹部へと痛みが広がっていきました。また射精時、射精後に痛みが出ることもありました。
慢性前立腺炎の原因
慢性前立腺炎の主な原因としては、下記が挙げられます。
・ストレス
・不規則な生活
・睡眠不足
・運動不足
・飲酒
・刺激物(辛いもの、コーヒー)
・冷え
慢性前立腺炎の検査
・血液検査
・触診
・CT撮影
・MRI撮影
・膀胱鏡検査
わたくしは最初に近所の泌尿器科を受診して尿検査を行い、処方された抗菌薬を服用していましたが、一向に症状が良くならないため、大学病院への紹介状を書いてもらい、血液検査やCT、MRIの検査を行いました。下腹部の痛みが強かったため、消化器外科や内科、整形外科なども受診しました。
また膀胱炎の可能性もあるということで、尿道から膀胱にカメラを挿入する膀胱鏡検査も行いましたが、いずれも結果は、「異常はどこにも見られない」という診断になりました。
一方で、直接肛門から前立腺をマッサージする触診をしてもらったところ、激しい痛みが走りました。健常であれば痛む場所ではないため、「前立腺に炎症が出ている」との診断をしてもらいました。
慢性前立腺炎の治療方法
投薬
1.抗生物質
細菌以外の病原体が原因の場合を考え、抗生物質を処方してもらいました。
2.αブロッカー
ハルナール、フリバス、ユリーフなどの薬が該当します。緊張している前立腺や尿道の筋肉を緩めて、尿をスムーズに出しやすくします。一方で副作用として血圧低下、ふらつき、逆行性射精などがあります。
3.植物製剤
セルニルトン、エビプロスタットなどの薬が該当します。慢性前立腺炎といえばセルニルトン、と言われるほど一般的な薬で、症状を和らげる作用があります。植物性なので漢方に近く、即効性はなく緩やかに効果が出てきます。
4.前立腺肥大症の薬
ザルティアと呼ばれる薬が処方されました。これは前立腺肥大症に使われる薬なのですが、尿道や前立腺を弛緩させ、排尿障害の症状を緩和します。
5.痛み止め
6.漢方薬
上記の薬の処方では一向に良くならなかったため、ツムラの竜胆瀉肝湯という漢方薬も処方してもらいました。
わたくしの場合、日常的に痛みがずっと続いており、また痛みで夜眠ることも出来ない状態だったので、自分に合う痛み止めを探すことが急務でした。
ロキソニンは全く効かなかったのですが、リリカとトラムセットを飲んでようやく日常生活を送れるレベルまで痛みが和らぎました。現在はトラムセットとサインバルタを服用しています。
ですので、慢性前立腺炎だと診断された方は、まず自分に合った痛み止めを探してみて下さい。これで生活のしやすさが大きく改善されます。
生活改善
慢性前立腺炎は具体的な原因が不明な場合が多く、「これを飲めば治る」「これをやめれば良くなる」ということがありません。
ですが、一般的に原因と言われているストレスの軽減や生活習慣の改善により、症状が軽減されることもありますので、薬を飲んでも良くならない場合は下記を少しずつ実践していきましょう。
・ストレスを軽減する
・食生活を改善する
・刺激物を避ける(辛いもの、コーヒー等)
・運動する
・飲酒量を減らす
・規則的な生活をする
・日光を浴びる
メンタルケア
慢性前立腺炎は日常的に鈍痛・疼痛が続くことや、痛みで睡眠の質が下がってしまうことなどから、精神的な病気を併発することが多いのが特徴です。
わたくしも夜中に痛みが収まらず、また治療の先行きがまったく見えなかったことから睡眠不足と精神的な苦痛で軽度のうつを発症してしまいました。
しっかりとした睡眠が出来ないと余計に精神的に追い込まれてしまうので、そこまで悪化する前に病院へ行き、遠慮せずに睡眠導入剤などに頼ってしまいましょう。
わたくしの場合は心療内科を受診し、寝付けない時はマイスリーなどの入眠剤、熟睡が出来ない時はベルソムラやフルニトラゼパムを処方してもらいました。
慢性前立腺炎は仕事への影響も大きい
下腹部から鼠径部にかけて継続的に痛むため、デスクワークで長く椅子に座り続けることが出来なくなりました。そのため、大学病院で「慢性疼痛」という診断をしてもらい、会社を休職しました。
ですが一向に良くならずに休職期間を終えることになったため、座り仕事以外で出来る職種(飲食店の運営)に転職しました。
長く休職期間が取れる会社であればその間に治療することが出来ますが、休職期間の短い会社の場合はわたくしの様に体への負担が少ない職種への転職も一つの選択肢になるかと思います。
家族や周りの人は理解を
慢性前立腺炎は目に見えない病気です。CTスキャンやMRI、血液検査等をしても何も現れてこない事が多く、「本当に病気なの?」「仮病じゃないの?」と思われることも少なくありません。わたくしの場合は痛みで会社を休んでしまっていたのですが、親からかなり非難を受けていました。
「仕事に行きたくないと思うから痛いと思うんだ」などと、登校拒否の学生に言う様なコメントもありました。登校拒否の学生も精神的なものからお腹が痛くなってしまう人がいるのも事実ですが、わたくしの場合は会社に行きたいのに痛くて行けない状態でした。そんな状態で家族から仮病を疑われて責められてしまうことは、精神的に余計なダメージを与えられました。
仕事に行きたいのに行けない、夜も痛くて眠れない、治る見込みもない。家族の支えも期待出来ない。いっそ死んでしまおうかと思うこともありました。ですがわたくしの場合は幸いにも周りの人達の支えもあり、なんとか踏みとどまることが出来ました。
なので、ご家族に慢性前立腺炎の方がいる場合は、検査などで結果が目に見えなくても、前立腺炎の痛みなどの症状があって苦しんでいることを理解してあげて下さい。そして可能な限りサポートしてあげて下さい。あなたの想像以上に孤独に、苦痛と戦っています。
まとめ
今回はわたくしが実際に実践した慢性前立腺炎の治療方法についてご紹介しました。
わたくしは慢性前立腺炎にかかり仕事を辞めましたし、うつ病で死にたいとも思いました。ですが、「必ず良くなる」「死ぬくらいならやりたい事をやる」と考え、ストレスを減らす生活をして生活改善を続けたところ、薬は飲み続けていますが、通常の生活を送れるレベルにまで症状が改善しました。
この病気は治療が数年がかりになることもあるため、意識して「如何にうまく付き合っていくか」が大事になってくると思います。
いま慢性前立腺炎を患っている方も、必ず良くなりますので、安心してください。ゆっくりと長い目で治療していきましょう。
何か質問が御座いましたら分かる範囲でお答えしますので、コメント欄にご記入下さいませ。